1.03.2019

[film] Bird Box (2018)

こっちから先に。 31日の夕方、CurzonのAldgateで見ました。
Netflixすごいねえ、としか言いようがないけど、これもシアターで見たほうがぜったいいいやつだよ。

Malorie (Sandra Bullock)が小さな男の子と女の子に向かって、これから小さなボートで長い旅にでる、今から目隠しをするけど、どんなにきつくても辛くてもこれを外してはいけない、なにか感じたら言うように、でもぜったいに目隠しを外すな、外したら死ぬからね、わかった? 子供たちは頷いて、Malorie自身も目隠しをして、小鳥3羽を入れた小箱を抱えて、予め張ってある紐を伝ってボートのところに行って乗りこんで、川に漕ぎ出す、というのが冒頭。

そこから5年前のある日、妊娠しているMalorieは姉のJessica (Sarah Paulson)と病院に検診にいくのだがそこに向かう車のなかで、ロシアや東欧で原因不明の集団自殺が報告されている、という奇妙なニュースを聞く。 医師とのやりとりの後で、そこに向かう前は携帯でふつうに話をしていた若い女性がガラスにがんがん頭をぶっつけて血まみれになっているのを見て、なんかおかしい、と慌てて車に乗り込んで帰ろうとするのだが、街中には同様のパニックを起こしてぐさぐさの人々で溢れていて、運転しているJessicaも突然様子がおかしくなって泣きながら車ごと突っ込んで死んじゃって、助手席から這いだしたMalorieはその傍にあった家から呼ぶ声の方に逃げて扉のなかに匿われる(Malonieを招き入れた女性はそのまま燃える車のなかに入っていって死んでしまう)。

家にはパニックから逃れてきた男女7人くらい - Douglas (John Malkovich) とかTom (Trevante Rhodes)とかがいて、窓ガラスを黒で目張りして、これまでにわかった情報から対策を立てたりしていて、ここを中心とした住民間のあれこれとサバイバル - 食料がなくなったのでガラスを黒塗りした車でGPSだけを頼りにスーパーマーケットに行ったり - 新たに助けを求めてきた人をやむなく中に入れたり - が中心になるのだが、見たらいきなり死にたくなってしまう「それ」の正体と対策はどこまでもわからないまま。

これとボートで川を下っているMalorieの10数時間後、20数時間後、40数時間後の姿と、最初に遡った5年前の時点からMalonieと子供ふたり(だけ)がボートに乗り込むことになるまでが交互に描かれて、果たして目隠しした彼女たちは無線で入ってくる声だけを頼りに安息の地にたどり着くことができるのか。

体裁としては、音をたてたら死んじゃう”A Quiet Place” (2018)や、噛まれたら死ぬしかないゾンビものと同じく、それが目に映ったら死んじゃう(デジタルイメージでもだめ)、人類のほとんどが死に絶えてしまった荒野でどうやって「それ」から逃げるのか、生き延びるのか、が中心にあるのだが、この作品のそれが嫌なのは、その正体はそれを見たひとにしかわからない、それを見た途端にそのひとは瞳が濁って自殺しちゃうので一切がほぼ共有されない、そういう見通しのきかない意地の悪さがあること。
そしてふと、これって集団というかたちを取らないひとりの自殺だってそういうものではないかしら?  とかね。

ただならぬ事態に遭遇したときのSandra Bullockのすごさ - 最初の動転ぶりと自分ひとりでなんとかするしかないと腹を括ったときの強さときたら”Speed” (1994)でも”Gravity” (2013)でも十分わかっているつもりだったが、ここでの彼女は最強すぎる。 こういう終末ものを見ていていつも感じる - そんなに無理して生き延びようとしなくても、死んじゃったほうが楽じゃないの? は、彼女を見れば吹き飛んでしまうだろう。目的も意味もほっとけ、とにかく生きるんだ、って。 そしてそのタイトルときたら、”Bird Box”なんだから。

家に立て籠もる住民たちのそれぞれにクセがあって均等にバラけたとこもいいねえ。
“Patti Cake$” (2017)のDanielle Macdonaldさんとか。

Trent ReznorとAtticus Rossの音がこういう情景にどハマりなのは言うまでもない。
Atticus Rossはpost-apocalypticモノの”The Book of Eli” (2010)でも音楽をやっていたけど、どこかしら力の入りようが違うかんじ。 網膜を直撃してくる「それ」を表すのに鼓膜をやさしくヤスリで引っ掻いてきて、気づいたときにはもう遅くて耳からなんかが…   この音を聴くためだけにシアターに行く価値あるよ。

原作は読んでいないけど、続きあるのかしら?

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