8.06.2018

[film] Sicilian Ghost Story (2017)

7月27日、金曜日の晩、BFIで見ました。一般公開前のPreviewで、内容もよく知らないままに。
2017年のカンヌ批評家週間のオープニングで上映されたものだそう。

洞窟の中のフクロウのクローズアップが最初で、その後もイタチ(?)とか犬とか馬とか虫とか動物がいっぱい出てきてよいのだが、とにかくイタリア、シチリアの田舎に12歳のLuna (Julia Jedlikowska)がいて、クラスメートのGiuseppe (Gaetano Fernandez) と下校途中の森のなかで追いかけっこしてじゃれ合って、彼の乗馬訓練(彼はお金もちの坊ちゃんらしい)を眺めたり、互いに見つめあって幸せそうで、でもある日からGiuseppeが学校に来なくなって、彼の家を訪ねて行っても彼の母親が狂ったように泣き叫んでいるのが聞こえたり、窓辺で真っ青になっているのが見えたり、とてもよくないことが起こっているらしいことがわかる。

その後はどこかにさらわれて監禁されているGiuseppe(← 彼の父親に対する報復らしい)と星に聞いたり森に聞いたり動物たちに聞いたり、彼の生存と彼が戻ってくることを信じて自身の心の底まで降りて絶望的な追跡と彷徨いを続けるLunaの姿を追う。 やがてふたりの想いは神さまに通じて、でもなく、Ghost Storyなので精霊とかがなんとかしてくれる、でもなく、森のどこかで自分たちを見ていたGhostがどっかに連れて行って隠しちゃったんだ、て想いが空回りしていくLunaは疲弊して、Giuseppeはぼろぼろにされていって、そして最後の最後には…

一途でまっすぐな少年と少女の愛のお話しで、彼と彼女が同じ星を見て同じ地面に祈る限りその想いは通じるはずなのに、そうはならないのでGhost Story、なのだろうが、きらきらしたファンタジーのほうには断固向かわずにそれぞれの閉ざされた世界で、それぞれの知覚と伸ばせる腕を精一杯伸ばして瞳を拡げて闇の向こう側に到達しようとする、彼が夢に出てくる限り彼はどこかにいてこちらを見ているのだと信じようとする、その手探りの感触とそこに触れてくる自然のありようが瑞々しくて、辛いけどそうやって紡がれて現れてくる幽霊の、その居場所まで思うことができる、そういうお話しだった。怪談やホラーに転化するぎりぎり手前で、若いふたりのラブストーリーに留まっている。 留まらせたものはなんなのか。

Bellocchioの描くイタリア、とは全く別の、でもこれもイタリアなのだろう。全体として突き放したところはどこか似ていて、でもそれに対する食らいつきかたはぜんぜん違う。後半の冥界を彷徨うかのような暗さ、でも同時にすべてを見渡すことができるような視界の広がり - 瞳孔が広がっていくような描き方はすばらしい。

Lunaの目も面構えも素敵でかっこよくて、彼女と動物たちを見ているだけでいい - なんてことはないけど、目を離せなくなることは確か。

だが、最後にこれ(Giuseppeの誘拐)が93年に実際に起こったことだと知って衝撃を受ける。
それってちょっと辛すぎる。

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