9.26.2016

[film] Jag är Ingrid (2015)

バーグマンのデビュー作『ムンクブローの伯爵』を見た数日後、24日土曜日の午後、渋谷でみました。

『イングリッド・バーグマン~愛に生きた女優~』。英語題は”Ingrid Bergman in Her Own Words”。
原題を翻訳にかけると『わたしはIngridよ』。

10代で最愛の父を失いつつあった彼女の祈りの日記から始まって、19歳で『ムンクブロー...』で映画デビューしてスウェーデンのライジングスターになり、結婚して娘もいたけど、デヴィッド・O・セルズニックに呼ばれてハリウッドに飛んで、そこから世界の大女優になって、二次大戦中の前線への慰問でキャパと恋におちて、更にロッセリーニと恋におちて3人の子供をもうけ、全世界から大非難を浴びて、やがて求められて復活したあとは亡くなるまで映画や舞台に出ることを止めなかった彼女の、「なんでも取っておく人だった」彼女の、膨大に残された日記、手紙、家庭8mm、ビデオ、彼女自身のインタビュー映像、家族を中心としたいろんな証言、をもとに描く決定版。 古い映画が好き、というだけで彼女のすごいファンでもないのだが、そこらの女性一代記を遥かにしのぐそのスケールに圧倒される。

『私は多くを望まない。ただ全てが欲しいだけ』 ていうんだよ。 かっこいいなー。

米国に渡る前のスクリーンテストの映像が残っていて、すっぴんで、No Lipsで、とあるのだが、これがまず驚異的で、とんでもない動物を見るかのようなかんじ。 この顔面映像だけで作品になってしまうくらいすごい。

ここまで有名になって、生涯に渡ってあれこれ曝され続けた大スターの評伝なので、その真偽なんてあれこれ言えるわけもないし、隠された謎や秘密なんてあまりなさそうだし、そんなことよりもその中味の濃いこと渦巻くこと。 これだって編集の手が入ってこうなっているだけで、残された膨大なアーカイブを掘っていったらもっと別のなにかが浮かびあがるのかも知れない。彼女が映画のなかで演じた人物の数も含めたら、彼女の生の地平にはものすごい数の家族や恋愛がうごめいている気もして、それはそれでぜんぜんよいし素敵なことではないだろうか。
(書簡集は作ろうとしたけど、書かれているのは子供のことばかりだったのでやめた、とか)

世界中を飛びまわって映画を作って、いろんな人と恋をして、家族を愛して、を延々やっているだけ、という説も。(「女性の活躍」、とか本人が聞いたら嫌な顔するかも)

わたしが見たことあるのはIsabella Rosselliniさんで、彼女の"Green Porno”シリーズは大好きなのだが(邦題、つけるとしたらなんだろうな、『緑のアレに包まれて』 とかかな?)、あそこにある大らかなユーモアって、お母さん譲りなのではないか、と、このドキュメンタリーで楽しそうに母の思い出を語る彼女を見て思ったの。

あと、大好きだった父親がいつもカメラの向こうから彼女を見ていた、だから彼女は映画監督とかカメラマンに恋をしがちだったんだわ、ていう娘の指摘はあんま外れていない気がした。

これと同じくらいのヴォリュームでKatharine Hepburnの評伝映画が見たいなー。
(でっかい女性が好きなのだろうか)

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