8.13.2016

[film] セトウツミ (2016)

2日の火曜日の晩、渋谷でみました。

放課後、高校生男子ふたり - 瀬戸(菅田将暉)と内海(池松壮亮)- でセトウツミ- が川辺でだらだら喋っているだけの映画。 たまにそこにいるおっさんとかピエロとかみんなの憧れの樫村さん(中条あやみ)がでてきたりもするが、喋っては返しをやっているだけで、ふたりは喧嘩したり酒のんだりドラッグやったりするわけでもなく、互いの悩みを打ち明けて一緒に泣いたり傷を舐めあったり毛づくろいしたりするわけでもなく、互いの言葉に即時反射して相手をやっつけたり言い負かしたり、そのために(その神経を鍛えるために?)ふたりは横並び座り(たまに瀬戸のほうが立ち上がる)で延々猿みたいにやりあっている。

原作はコミックだそうで、そっちのほうだと少しは話のネタそのもののおもしろさも入ってくるのかもしれないが、映画は極めてシンプルに、喋りとその間、動くほうと動かないほう、それが生み出す変な磁場に取り憑かれて狂ったようになっているふたり組の動きに集中している。 喋りだすと同時にカメラと世界がすごい速さでまわりだして止まらない。(画面はほとんど固定だが)

瀕死の飼い猫を救うためにキャットフードにお金をつぎ込み過ぎて家計が貧窮して離婚の危機にある瀬戸くんの親とか、お寺の娘の樫村さんは内海くんのことを追っかけているのだが彼女を好きなのは瀬戸くんのほうで、とか、そういった割とどうでもいいこともあったりするのだが、だからといってふたりの横並びが止まることはなくて、噛みあおうが滑ろうがおしゃべりは止まらなくて、この辺、『ママと娼婦』にあった揺るぎなさ、とか、ジャームッシュの脱力系のいくつかの頑固さに近い - つまりはしょうもない青春によくこびりついたなんか、を感じた。

結構おもしろいーと思ったし、当たってほしいなーと思うものの、最近のなにがおもしろいんだかちーっともわからない芸人トークみたいなのの流れで捉えられてしまうのだとしたらちょっと勿体無いかも、とか。
放課後、川に向かってなんもすることなく浮遊する時間、ていうのがかんじんだと思うから。

鈴木卓爾という監督/俳優さんが川の前でぼーっとしているおじさんで出ていて、このおじさんは実はみんなから恐れられる学校いち凶暴な生徒のお父さんで、やはり彼が演じていた"Dressing Up”でのお父さんと合わせるとどんだけおそろしいDNAやねん、て思った。 (そして昨日みた"Village on the Village"では...)

猫のシーンがとてもよくて絵になってて、なんか泣けた。 すてきな三毛だった。

あと、しょうもないJ-POP被せなかったのもえらい。
内海が聴いてたのはくるりだったが。

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