5.30.2015

[film] La belle personne (2008)

23日、アンスティチュの同じ特集で”Tomboy”に続けて見ました。
Christophe Honoréの『美しいひと』 - 英語題だと”The Beautiful Person”。

これもすばらしくよかった。 いちころ。

原作のラファイエット夫人の小説『クレーヴの奥方』、この古典ロマンを現代フランスの高校生のお話、学園モノにしている。

寡黙で不機嫌なJunie (Léa Seydoux)は母をなくして従兄弟のMatthiasのところに世話になっている転校生で、同窓のOttoと恋仲になって、イタリア語教師のNemours (Louis Garrel)のことも気になって、彼らだけじゃなく登場人物全てがものすごくいろんな視線、お喋り、噂、妄想、嫉妬、憶測、罵詈、雑言、などなどに絶えず曝されつつ、結果としては互いのお尻や胸や唇を求めて右往左往している。 だれも勉強なんてしてやしなくて、呼びたい奴はそれを恋と呼んで、欲望のままに何かを吐きだし、掃きだし、目の前の人物は入れ替わっていく。

17世紀末の物語や心理のひだひだを現代に置換して、というよりも、現代の高校生活には既にそれらがじゅうぶん全部あって、学生も教師も食堂のおばちゃんもその中を生きている、古典を読むことと現代のお喋りやノイズは例えばこんなふうにも連なって重なって、ひとつのでっかい音楽を奏でることができる。(わかったかサルコジ)

相手の気を惹く、目線で伝える、言葉で伝える、頭のなかでもやもやする、歌を唄う、ここにはやってはいけないことなんてなにひとつない。 現代の学園においては、やりたい放題の聖域を例えばこんなふうに俯瞰することだってできる。 そこには悲劇も喜劇もない、か、悲劇も喜劇もなんだってある。

でもこれを、寂しがり繋がりたがりの思ったことをすぐ口にして堪えられない今の子供たち(偏見です)に適用したらどうなるのか、ていうのは少し気になる。
(そんなのこれっぽっちも見たくないけど)

Louis Garrelは、首をのばして恋にきょときょとおどおどしているまだ軽い時代の彼(こういうのがいいの)で、それにしても、その遥か上をいくLéa Seydouxのすばらしいこと。 屋外でOttoの前に胸をはだけて殺し屋みたいにすうっと現れるところなんか、たまんないし。

ぼくの名前は平凡すぎて本の主人公なんかにはないんだ、て沈むOttoのところに彼女が持ってくる絵本がこれ。 いいよねー。

http://www.tomiungerer.com/work/books/otto/

音楽はバッハやドニゼッティにNick Drakeの詩と唄が被さってもなんの違和感もないの。
こないだの“The Last Five Years”をChristophe Honoréが撮っていたらなー、とか。

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