2.28.2015

[film] 20,000 Days on Earth (2014)

19日の木曜日の晩、終っちゃいそうだったので慌てて新宿でみました。
前日のライブがMike Patton(FNM)で、濃いひとたちが続く。

Nick Caveのドキュメンタリーフィルム、ではないことはタイトルロールの後、彼がベッドから起きあがる最初のショットでわかって、これはシナリオがあって映像作品として撮られることを狙ったもの、彼が映画を通してなにかを言わんとしたものなのだな、ということがわかる。

基本はインタビュー、というよりセラピストのような人たちとの対話と、彼の傍で仕事をしてきた人たち - Warren Ellisとか、Blixa Bargeldとか、Kylie Minogue -  と彼との、まるで冥界で話しているかのような対話。

アーティストのポートフォリオ、というほど作品や人物像に迫ったものではないのだが、生い立ちのこと、父親のこと、執筆や音楽のこと、などなどについて、ものすごく普通に、高揚することも激昂することも泣いたりすることもなく語っていく。 全生涯全作品の回顧、というよりは20,000日間の旅日記抜粋、のようなもの。そういうなかで、ゴリラみたいだったりヤク中みたいだったり凶暴だったり気難し屋だったり、というイメージで語られがちだった彼自身の像は気持ちよく裏切られていくのだが、でも、我々は彼がそういうひとだということはずっと昔から知っていた、わかっていたんだよね?  ということを改めて確認する、そういう映画でもあった。

比較するのは適切じゃないかも、だけど、1月の終りに見た”David Bowie Is”とはまったく異なる切り口。 
(あれはBowieの映画を通して彼の全体像に迫るかに見えて、結局はV&Aの展示内容の解説 - BowieというよりV&Aばんざい! の映画だった)

この映画に現れてくる彼の親密さ、とか真っ当さ - 例えば一番怖いものはなにか、と言われて「忘れること、記憶を失うことだ」と言うとき、彼がこういう形の映像を残したかった理由はすごくわかるし、極めてコンスタントに音楽や詩や小説を発表しつづけていることもわかるし、続けてよね、と切におもうのだった。

遺書のようなものになるのかしら、という懸念も最初は少しだけあって、でもたぶんそうではなくて、とりあえず20,000日で切ってみた、くらいのものなのだろう。
ラスト、彼をひとり海岸に置いたままゆっくりと海のほうへ遠ざかっていくカメラがすばらしいのだが(南極に置き去りにされた犬を思いだした.. のはよくない)、次のときには、これがゆっくりと寄っていくことになるのだろう。

そういえば、こないだのNYのレコードで唯一収穫らしい収穫だったのは、この映画のリリースを記念して発売された10inchだった。 映画のなかにも出てくるSydney Opera Houseでのライブから2曲。 “Give Us A Kiss” と”Jubilee Street”。 すんごくよいの。

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