1.04.2015

[film] 下町(ダウンタウン) (1957)

27日の午前、京橋の千葉泰樹特集での二本立て。この年最後の京橋、千葉泰樹特集の最終日。
10時過ぎに着いたら館外に列が延びていたのでびっくりした。
二本とも極上の女性映画でした。 男性も割と安心して見ていられる、という点でもな。

下町(ダウンタウン) (1957)
原作は林芙美子(読んでいない)。 58分。

山田五十鈴がシベリアからの夫の復員を待ちながら下宿屋に間借りして一人息子を育てつつ一軒一軒まわりながらお茶を売っていて、でも夫の生死は不明だしお茶は売れないしで疲れきっている。
川べりでくず鉄屋をやって暮らしている三船敏郎のボロ小屋で休ませて貰ってお茶をあげてお弁当を一緒にしてから仲がよくなって、息子も連れていって、家族みたいになっていくの。

彼もシベリアの復員兵で、でも妻は別の男のとこに行ってしまったので別れていて、山田五十鈴の辛い状況もよくわかっているのだが、互いに惹かれていくのを止めることができない。 他方、売春の斡旋のようなことをしている下宿屋のおかみは仲良しのおやじに頼まれて山田五十鈴にどう? て言ってきたりする。

三人で遊園地に行って映画を見て外にでると土砂降りで、そこらの安旅館にみんなで泊まるのだが、ふたりともなんか眠れなくて我慢できなくて一緒になってしまう(ここのもどかしいやりとりもよいの)。 翌朝さすがに気まずくなるのだが、覚悟みたいのは固まってきて、そしたら…

ぼろぼろだけど妙に艶っぽい山田五十鈴と粗っぽいけど俺はやるぜみたいな三船敏郎がひとつの画面に収まっていると怪獣映画みたいに溢れんばかりの力強さがあって、これ、どうするんだろ、とか思っていたらあんなふうに終らせちゃうとは。

やっぱしとにかく山田五十鈴がすばらしくて、出会ったばかりの頃、息子と三船敏郎をトラックで送り出すときの笑顔のあまりの温かさに泣きそうになっていたら隣に座っていたおじいさんが「ええ笑顔やなぁ..」て小さな声でいうので決壊した。

あとは下宿屋の2階の彼女の部屋から遠ざかるカメラがとらえた下町の家屋と部屋の灯りと。
遠くでぽつんと灯っているかんじがたまらないのだった。

みれん (1963)
原作は瀨戸内晴美(読んでいない)。 99分。

織物の彩色デザインをしている池内淳子には自分の借家に週半分くらい来て泊まっていく愛人男(仲谷昇)がいて、彼には正妻の岸田今日子と子供がいて、もうこの生活は8年くらいになるので全員がその関係をわかっていて、いいかげん疲れてきた頃に、かつて自分の不倫生活をキックしてくれた仲代達矢が落ちぶれたダメンズ姿で現れてなにかを燃えあがらせてくれて、仲代達矢は池内淳子の現在を知るとそんなのよくない、とわなわなしてくれたので、やっぱし別れよう、て仲谷昇に告げると「殺す」とかさらりと言われたり、こうして四つ巴の意地とみれんのたらたら合戦がじっとり続いていくの。  でもずうっとそういう状態が続いていくので、そういう境遇の中で始めから生きている人たち、のように見えてそれはそれでありなのでは、とか思えてしまうのだった。

だって仲谷昇と仲代達矢が自分のために真剣に怒ってくれるんだから、向こう岸で岸田今日子がどろどろ呪ったくらいでやめようとは思わないよね、とか。 疲れたらやめりゃいいだけだし。
でもこんなの嫌なんだよもういいかげん、て空き缶をかんから蹴っ飛ばすシーンが素敵なの。
あんまし演歌ぽくない、というか。


この後、ブリヂストン美術館にデ・クーニングを見にいったらもう年末休暇に入っていてしょんぼり、みれんたらたらで帰った。

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