9.27.2023

[log] London - 0925

9月25日、月曜日の昼間に飛行機に乗って英国に向かう。

行きは8月に出張した時と同じBA機材の便で、今回のもまだ新しい機体にはなっていない - 眠くなったら座席をうぃーんて倒して足を伸ばしてレバーをひねってパタンって橋をかける(わかるひとにはわかる)しみじみ変な座席仕様で、なんでそんなのに乗っていくのか往復JALでよいのでは、と思われるかもしれないが、ひとつには機内食があたりまえに英国のごはんしてて、これはつくりが日本で食べる所謂「洋食」とははっきりと違うかんじで懐かしくなるのと、もうひとつはいろんな新しい映画をまとめて見れる – とにかく14時間あるし - というのがある。日系エアラインでかかる映画(洋画)のセレクションはいつからあんなにつまらないのになってしまったのだろうね?


Polite Society (2023)

ずっと見たかったやつ。ロンドンのシェパーズ・ブッシュにパキスタン系の姉妹 - Ria (Priya Kansara)とLena (Ritu Arya)と両親が暮らしていて、妹のRiaはスタントウーマンになることを夢見て日々格闘技の稽古をしたり女学校内で喧嘩したり威勢よく元気たっぷりで、姉のLenaはアートスクールに通っていたのだが、最近描くのをやめてしまったらしい。Lenaが富豪の母とそのきらきら系エリートの息子が開いたパーティに呼ばれて、他にも若い女性がいっぱい呼ばれているので品評会みたい、ってやな予感がしたのだが、やがてLenaは息子に婚約者として選ばれあれよあれよと式をあげたらすぐ彼のラボがあるシンガポールに行く、というのでなんかこいつ怪しいぞ、って彼の身の回りの調査を始めて、でもやばそうなのは出てこないし家族からもLenaからも怒られたので諦めかけたら、直前にこれはあかんぞ、ていうやばいネタが出てきて断固式を阻止すべし! って仲間と一緒に大作戦を立てて会場に乗りこむのだが、敵 – 特に婚約者の母親は格闘技の達人でRiaには歯が立たなくて絶体絶命に陥って…

家族ドラマであることとか敵がわらわら手強くしぶといこととか絶体絶命てんこ盛りなこととか、昔のB級カンフー・アクションのノリがてんこ盛りなのだが、パキスタン系移民の姉妹を中心に据えたことでびっくりするほど生き生き跳ねまわる楽しく爽快なコメディに仕上っている。特に”Bridgerton”にも出ていたPriya Kansaraさんの身体の動きと力強さがすばらしくかっこよい。ラストにX-Ray Spexの”Identity”が鳴りだしたところでうむ! って。 これは日本公開されなきゃだめよ。


Somewhere in Queens (2022)

Ray Romanoの初監督作で、共同で脚本も書いて主演もしている。QueensはBrooklynと比べると注目度はぜんぜんかもしれないが、とっても好きな町 – 歩いていて楽しいよ - だし、こんなの日本ではぜったい公開されないだろうし。

Queensでずっと続いている家族一族経営の建築屋をやっているLeo Russo (Ray Romano)とAngela (Laurie Metcalf)の夫婦には一人息子の”Sticks” (Jacob Ward)がいて、高校(Glendale)のバスケットボールチームではエースで、夫婦で見にいって応援して、試合には負けたものの帰りに大学のスカウトから声をかけられる。

素直なよいこのSticksには明るいGFのDani (Sadie Stanley)がいて、彼女を両親どころかRusso家の全員に紹介して、Daniも初めは戸惑いつつもみんなと仲良くなっていくのだが、詩も書いているんだ、というStickが書いたそれを聞いた彼女は少し困ったふうになり、だんだん距離ができて別れたい、と彼女が告げる。Sticksの様子を見て心配になったLeoはDaniに会いに行って、大学への進学もある大事な時なのでもうしばらく彼の傍にいてやれないか、って頼んで..

という息子の恋愛模様に父親が首を突っ込んだことから始まる一族の生々しい崩壊… の他にもAngelaの病のこと - かつて癌の治療をしたけど完治してなかった? - とかいろんな事情やおせっかいが絡まり、全員が隅々までおせっかいでやかましくてタフな家族ドラマが展開する。かつて小津あたりがやってもおかしくなさそうな、今時こんな? っていうノリなのだが、なんか悪くないの。Versailles palaceっていう結婚式場のようなところでしょっちゅうテーブルを囲んで宴会をしている家族 – Queensあたりならいかにもいそうだし。


Maybe I Do (2023)

これもNY映画で、40年くらい昔のrom-comのような印象。脚本・監督のMichael Jacobsによる”Cheaters”というお芝居が原作。こんなの舞台でやったほうが、ってふつうに思えてしまう一本だった。

ある晩の3組のカップルの姿が描かれる。
映画館でポップコーンをばりばりしつつひとり泣きながらスウェーデン映画を見ているWilliam H. Macyに同じ映画を見ていたDiane Keatonが声をかけて、ふたりでモーテルに行ったりダイナーに行ったり、こういう場合はなにかしたほうがよいのかと思いつつもどうすることもできず、でも互いが同じような人生の悩みを抱えていることに気づく。

コロンバスサークルにある高層ホテルでRichard GereとSusan Sarandonがベッドに横になっていて、ふたりはつきあって4カ月になろうとしているらしいのだが、ずっと積極的なSusan Sarandon に対してRichard Gereははっきりこの関係を終わらせようとしている。

つきあっているEmma RobertsとLuke Braceyが親友の結婚式に出ていて、ブーケトスの時にEmma Robertsがキャッチしようと目をギラギラさせているのをみたLuke Braceyがトスされたブーケをが横っ飛びで全身でブロックして、同居しているアパートに戻ったふたりは、なんでどうして? って喧嘩になり、Emma Robertsはアパートを出て実家に戻る。

彼女が実家に戻ると両親はRichard GereとDiane Keatonで、Luke Braceyの実家の両親はWilliam H. MacyとSusan Sarandonで、要はどちらの実家でも夫婦関係は壊れていて、結婚しても自分の親みたいになってしまうのならしないほうが、とLuke Braceyは思っていて、それでも仲直りも兼ねて両家で会ってみよう、って顔合わせをしてみたら、それぞれの親たち全員があーらびっくりパニックになっておもしろい。

わかりやすいシチュエーションとじたばたコメディを通して結婚とは、を炙りだそうとしているのだが、あまりに普通すぎるというか、生活に困ったことがない白人エリート層の余裕と嫌味にしか見えない - そういうのを示したいのなら当たりかもだけどそうではないし。キャスティングも嫌味ぷんぷんで悪くない、のにー。

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