8月7日、土曜日の午後、シネマヴェーラのジョン・フォード特集で”Tobacco Road”に続けて見ました。
邦題は『荒野の女たち』 - この邦題からあの内容はあんま想像できないよね。
原作はNorah Loftsの短編 - ”Chinese Finale”、これをJanet Greenともうひとりが脚色。 で、これがジョン・フォードの遺作なのだと。
1935年の中国の辺境の地にキリスト教の伝道施設があって、伝道に携わるのは厳格なシスターAgatha (Margaret Leighton)の下、全員白人、一人を除いて全て女性 - キャストも女性ばかり - で、AgathaのアシスタントのMiss Argent (Mildred Dunnock)と妊娠していて辛そうな中年女性Florrie (Betty Field)とその夫のCharles (Eddie Albert)、あとはまだ若いEmma (Sue Lyon)がいて、英国ミッション代表のMiss Binns (Flora Robson) とMrs. Russell (Anna Lee)、ここに医師のDr. Cartwright (Anne Bancroft)がシカゴから赴任してきて、これで7人? はっきりと7人それぞれの個が前に出てくるわけではなくて、追いやられて閉じこめられて散々な目にあうのがこの7人の女性たちだった、ていうだけのような。
Dr. Cartwrightは張り切って新天地に颯爽と現れる、というよりシカゴのスラム街の医療で散々苦労してここまで来た叩き上げなので、患者の治療は大事だけどキリスト教がどうのなんてどーでもよくて、タバコは吸うは酒はあおるは館長のAgathaと正面から衝突しまくるのだが、難民のようになって逃げてきた人々の間にコレラが確認されたり、高齢出産で心身衰弱しているFlorrieへのケアに不安があるとか、ここの環境は医療を施すにはよくないので早く他に移るべきだ、ってAgathaに何度も訴えるのに彼女は聞かない。(災害パニック映画の定番のようにこの態度と選択が後になって…)
教会の外で原野をうろついていた山賊みたいに野蛮なTunga Khanの一党の勢いを地元の軍も抑えきれなくなって逃げだして、そんなことが.. って様子を見に出ていったCharlesが簡単に殺されて消えちゃってこれはまずい、って思ったときには一味は施設の敷地内に侵入してきて銃殺とか格闘とかやりたい放題を始めてしまう。キリストさまがどうなんて聞くわけない、ほーら言わんこっちゃないだろ、って。
筋肉と武力で自分たちのやりたいようにやって言うことを聞かせたいだけの男たちは女性や子供たちの解放する条件としてDr. Cartwrightを妾にしたいって言ってきたので、彼女は舌打ちしてそれを受けて…
Anne Bancroftの最後っ屁の捨て台詞がかっこいいとか言われているようだが、やっぱりこれはお話しとしてはさいてーのひどいやつで、彼女はただ筋肉しかない動物以下のクズ男たちといざとなったら何ひとつできない女性たちとの間で自ら犠牲になった(毒をあおって自死する)だけでヒーローでもなんでもないの。本当に過酷で悲惨で救いのない話 - なんでジョン・フォードはこんな話を最後に撮ろうと思ったのかしら? 自分のやってきたことなんてこんなもんでしかなかった、とでも思ったのかしら?
(確かに、”So long, ya bastard!”は最期に世の中にぶつけてやりたい一番汎用的な台詞かも。中指つきで)
これが1966年にリリースされた意味ってあるのかないのか、 とか。
開拓時代のアメリカ中西部でもウェールズの炭鉱でも船の上でも、コマンチ族との間ですらキリスト教的な倫理とか家族観(のようなもの)がぎりぎりで機能してくれたり被さってくれたりした(と思わせてくれた)世界から遠く離れて条理の通らないところ - あ、”Mogambo”の世界だけはちょっと違うか - で、人は(通じなくて動物に近いところにいる)人とどうやって渡りあうのか、ってなったところで現れるのはAnne BancroftだったりAva Gardnerだったり、ってどうなのか。やはり荒れ果てた世界での最終兵器となるのは彼女たち、なのか? - あんま異論はないけど。
でもなんというか、この1本があることで世界の深さというか奥行きが - 大凡どうしようもない/どうすることもできないやつであるという点も含めて、でっかい絵姿となって改めて現れるというか、ここに宗教もコメディも捜索者もリバティ・バランスを射ったやつもみんなみんな呼びこまれて一列に並ばされていくような、そんなかんじになったの。
ここに書いてもどこの誰にも響かないと思うけど、今日(8/21)の午後、ロックカフェロフト(西新宿の方に歩いていったらなかった)で行われた上村さん鈴木さんによるThe Fallのイベント、すばらしくよかった。これまで時期とかレーベル別にきちんと聴いたことなかったかも、って。いまだに開けられていないどこかの箱のどこかにある奴らをはやく解き放たなければ。
8.21.2022
[film] 7 Women (1966)
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