12月4日、土曜日の晩、エジンバラのRoyal Lyceum Theatreの配信で見ました。
17世紀、スペイン黄金時代のバロック演劇の作家 - ペドロ・カルデロン・デ・ラ・バルカの同名戯曲(未読)が原作。原作の英語翻訳版(by Jo Clifford)は有名らしいがその割にあまり上演されてこなかったそう。演出はWils Wilson。
シアターと舞台の全景は映されなかったが、舞台上にも客席が作られていて、役者の衣装替えや化粧をするコーナーもそこに晒されていて - Ivo van Hove仕様 - 全体が見世物小屋のような作りになっている(のかな)。
ポーランドの女王(Alison Peebles)によって(悪い子に育つという預言を恐れて)幼い頃から地下に幽閉されて飼われていたSegismundo (Lorn Macdonald)が表に出てくる。口にはMad Maxみたいな口輪を填められてしゅーしゅー唸って獣のような目をしてて、当然のように猛り狂っていて近寄れないかんじなのだが、女王は彼を宮廷に戻してどうなるか見てみようとする。
ポーランドの王位は継承者であるいとこ同士のEstrella (Kelsey Griffin)とAstolpho (Dyfan Dwyfor)が結婚して継ぐことになっていたがふたりの仲はぎくしゃくしていて、そこに現れたSegismundo(この人も継承者)がEstrellaに一目惚れして間に入った召使いを殺してしまったり、かつて会ったことのある男装のRosaura (Anna Russell-Martin)を口説こうとしたり、やっぱりめちゃくちゃで手に負えないわ、と改めて幽閉されることになって結局のところ人生は夢みたいなもの - ”Life is a Dream”、って思うようになるのだが、 家臣Clotado (John Macaulay) に言われた“Even when you’re dreaming/ The good you do is never lost.”という言葉が残る。
やがて不満が爆発して蜂起した民衆がSegismundoを担いで反乱を起こし、そのごたごたの中でなにが起こったのか捩れていた恋人たち - AstolphoとRosaura、SegismundoとEstrellaもきちんとくっついて、そうやって目覚めたSegismundoは女王を赦して、反乱を起こした首謀者を塔に幽閉して、めでたしめでたし、になる。
ここには人生は夢なのか、夢だとしたらなんでこんなにもきついのか、とか、意志は運命に打ち勝てるのか、とか、獣と人間の違いとか、どうやって人は学んで変わることができるのか、とかいろんなテーマがあって、これらの顛末が”The good you do is never lost”っていうところに集約されているような。ここでいう”The good” - 「善」って、なにをもってどんなふうにして形成されるのか? - そんなの相対的なもので時の権力の型にはめられることではないのか、など、そういうところも含めて、舞台上に並べられていくので、いろいろ考えさせられる。
衣装は古典というより現代ふうで、反乱の場面では自動小銃だってでてくるし、舞台上には現代の観客も置かれているので、これはどちらかというと現代の我々についての劇で、ロックダウンで長く自宅に幽閉されてきたスコットランドの人々は、改めて”Life is a Dream”について考えてしまったに違いない。ほんの少しのタイミングや機会の違いで簡単に人がぽろぽろ亡くなったり仕事も失われたりして、それでも人々はいつか元に戻れることを信じて日々の買い物をしたりエクササイズしたりリモートで仕事をしたりしながらよいこにして待っていた。これをそれなりの規模とか節度で実行させたのはなんだったのか、ということよ。例えば。
(政府がやれと言ったから、だけじゃないと思う)
(でもそれらを無意識に浸透させて誘導するのも権力とか宗教の重要な使命であり機能だよね)
(もちろん、反対側でいろんな陰謀論が渦を巻いたし、今になっていろんな反動が噴き出していることもわかるけど)
Film at Lincoln Center(NYFFの元締め)で来年の3月に田中絹代特集やるって。だからなんで日本で見れないのさ?
12.12.2021
[theatre] Life is a Dream
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