12月12日、日曜日の晩、Apple TVで見ました。
Maria Schrader監督によるドイツ映画で、原題は“Ich bin dein Mensch”。 主演のMaren Eggertさんは今年のベルリン映画祭で主演女優賞 - じゃないジェンダー区分をなくしたので、Best Acting Performance - を受賞している。
邦題には「恋人はアンドロイド」とかあるけど、劇中には「ヒューマノイド」か「ロボット」という言葉しか出てこない。 Rom-comで、日本では相も変わらずポスターも含めてキラキラしたお飾りと漂白がされているようだが、そんなに甘い話でもないような。
近未来のベルリン、考古学者で独身のDr. Alma Felser (Maren Eggert)はダンスホールで自分を”Employee”と名乗る女性(Sandra Hüller)からTom (Dan Stevens)を紹介される。Tomはロボットで、Almaの日々の用達しから不満不平の充足まで、すべて彼女の仰せのままを満たすように設計されているという。 研究の予算獲得のため大学の上から説得されてこの実験プログラムにモルモットとして参加することになった彼女は乗り気ではない。 Ex-彼のJulian (Hans Löw)とのこともまだもやもやしているし、実家には痴呆症の父もいるし、日々の不満や悩み事でいっぱいだし、そんなことをロボットごときが解決してくれるとは思えないし、そんな期待をしたこともないし、相手をしている暇なんてありゃしないの。
でも仕方なくTomを連れ帰って、朝になると”彼”が見事な朝食を用意して待っていてくれたりするのでめんくらうし、忙しかったりいらいらしている時に親しげに寄ってこられるのも嫌だし、そんなの気を使わなくていいから、っていうと何もしないでただそこにいるだけだったり、そうするとちょっと悪いかな、になったり、でもそういう感情の揺れや惑いもぜんぶTomのAIは見越したり微調整したりしながら動いているのだと思うと癪だし、Almaはそんなやりとりを重ねながら自分の日々の苦労あれこれや一緒にいる人に求めようとすることなどについて考えていくことになる。
そんな彼女の戸惑いや思考のプロセス - ロボットとは、自分が日々ロボットに求めるものがあるとしたらそれは何なのか - などについては、当然我々自身の身に照らして考えることになるので、なかなかおもしろいの。もちろん、そんなの研究テーマでもない限り考えたこともないので、そんなところで考えこんでイラつくことすら時間のムダだし鬱陶しい、って一度は彼を返品してしまうのだが、一旦、一時期でもTomを生活の一部として「使って」しまった後に開いた穴があることにはたと気がつく。そしてそれを見透かしたような出ていったTomの言葉と動きと。
そこから更に、Tomに対する扱いや振るまいってロボットに対してだけでなく生身の人間に対してもやってしまっている所作や態度だったりしないだろうか? それを無意識にふつうの他人と近しい人(含. 自分)に分けてやっているだけで、実はロボット的なケアも含めてものすごく複雑な処理を他者に要求したりしていなかっただろうか? そこに甘えたり依存したりしている部分は見えていないだけで間違いなくあるし、そして自分から離れていったExや痴呆で家族の記憶を失いつつある父は、自分がいらないと見えないところに追いやってしまったTomとどこが違うのだろうか? って。
これ、Tomが限りなく人間に近く見えたり動いたり、エラーも故障もほぼなく動作するロボットで、周囲からも彼はロボットではなく人に見えている、というのと、そもそも主人公はロボットとかAIになんの期待も抱いていない、という前提があって初めて成り立つコメディで、これをよりシリアスにリアルに捉えてみれば、例えば”Ex Machina” (2014)のような冷たいサスペンスにもなりうるやつで、着地点があんな甘いのでよいのか、という観点からの賛否があることはわかる。けど、rom-comとしてみれば、ごくふつーのrom-comのように見えてしまう - メタrom-com的なところがおもしろいな、って思った。
でも、Tomみたいのがいたらお片付けも仕事も処理系のはぜんぶやってもらえるし、旅行行く時もいろんな手配とか任せられるし、自分はお散歩したり映画行ったり本読んだり(たまに音読してもらう)、使いようはいっぱいある気がするんだけど。でも、実際にいて動いていると、いることを意識せざるを得なくて面倒だったりするのかしら、って勝手なことばかり考える。 猫よりは楽、なのかしらん。
書かなければいけないのなんてないことはわかっているのだが、書いていないのが頭の奥に溜まっていくのはなんかストレス - そのうちに忘れちゃうから - で、時間があれば書きたいのだが時間があると寝ちゃっていたり、これだから冬ってやだわ、って。 しかもお片付け、なんてさ…
12.29.2021
[film] I’m Your Man (2021)
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