12月5日、日曜日のごご、Tohoシネマズ日本橋のNational Theatre Liveの再映(?)で見ました。
3時間半の長さなのだが、日曜の午後にこういうのを見てうっとりできるのってよいかも。(翌日には仕事がつまんなくて泣いているのだが)
BristolのOld Vicによる2015年のプロダクションで、オリジナルは前後編で2日間に分けて上演されていたそう。原作はもちろん、Charlotte Brontëのクラシックで、演出はSally Cookson。
舞台には木材で二階建てのジャングルジムのような構造物が組まれていて、これは建物の骨格でもあり足場でもあり、ここの一階と二階、枠の外側と内側の間をくぐって抜けたり渡ったり、こいつは固定で、この脇や背後を人が行き来して(ドアはなくて)、枠やカーテンが上がったり下がったり火事の時には背後で火が噴きあがる。
あとは音楽担当のBenji Bowerを中心とした小編成のバンド - ジャグ - ちんどん屋系がステージ上にいて、Melanie Marshallによるソロ・ヴォーカルが入る。俳優たちはJane (Madeleine Worrall)を除いて複数の役を兼務(含. 犬と人の兼務あり)して主人公の周りの声に厚み(入れ替わり立ちかわり)を与える。
親と死別した後、預けられた家を追われて孤児院にやってきたJaneが仲良しだったHelen (Laura Elphinstone)と病で死別したりしてMr. Rochester (Felix Hayes)の家に住み込みの家庭教師としてやってきて、そこのフランス語しか喋れない娘Adele (Laura Elphinstone)に英語を教えているうちに当主のRochesterと恋におちて求婚されるものの彼は結婚していて精神を病んだ妻 - Bertha Mason (Melanie Marshall)が同じ屋敷に幽閉されていたことがわかって、傷ついてそこを出て行き倒れそうになったところを牧師のSt John (Laura Elphinstone)に助けられて、彼と一緒にインドに行こうって誘われるのだが、やっぱりできないってRochester邸に戻ったら… (火事)
原作はもちろん問答無用に目を離せないやつなのだが、巻き込まれ型ロマンスのうねりを真ん中に持ってくるというよりもどこにも留まることができない/留まることを許されないJane Eyreの一代放浪記、のような趣きで、彼女に降りかかってくるいろんな方角からの縛りや不条理や不幸に彼女が何を言って返してどんなふうに立ち向かって弾きだされたり克服したりしていったのか、その想いや言葉を拾いあげ、それが背後で重なるコーラスとなって舞台を覆って広がっていく。隅っこで泣きながらそれを呟いて呪うのではなく、正面を向いて世界に向かって見得を切るようなかんじで。
原作が持っていた装置としての家屋敷や土地・風土の縛りが導きだす閉じた空間の暗さや閉塞感をあえてとっぱらうことで、とても風通しのよい普遍性をもったドラマになっていた気がする。Barthaの隠蔽されていた呻き声すら掬いあげて歌として響かせる - ここは演出家の明確な意図があって、おそらくJane Eyreの声もまた、すべての女性に覆い被さってくるコルセットからマナーから血縁から - の因縁や縛りを解き放つものとして機能し組織化されている。そこまでやるのか、というところで賛否はあるのかも知れないけど、Janeのざっけんじゃねーよ!が響いて伝わってくるだけでも素敵、って思った。
全体としてミュージカルがもたらす組織化された高揚感ともまた違う、手当たり次第に楽器を手にとって歌ってあがっていくバンドのノリというか。わんわんのPilot (Craig Edwards) ですら彼女のことをじっと見ていたり(鞭がしっぽ)、彷徨うJaneが移動するときに、キャスト全員が隊列をくんで通過する土地の地名を連呼していくところ、昔の「全員集合!」みたい(しらないか…)で楽しかったり。
あと、いつも思うのだが休憩時間あけに演出家のインタビューとかの映像が流れるやつ、ぜんぶ終わったあとにした方がよいのではないか。後半のシーンの一部が流れちゃったりするし。
あと、舞台にもよるのだが、これはライブで見たかったなあ、っていうことがしみじみわかったり。それがわかると劇場に行きたくなって、行きたくなるけど… (嘆息)
英国のNHSからCovid-19のワクチンをはやく受けるように、ってメールが来た。行っていい? 行きたいんですけど。
12.13.2021
[theatre] Jane Eyre (2015) - National Theatre Live
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