30日の午前中、渋谷で見ました。嫌な雨がずうっと降っていたが、しょうがない。
冒頭、大きな船に向かって大声で叫びながらぴょんぴょんする少年がいて、それが主人公のアミル。
彼は飛行機も好きで、海辺で瓶拾いをしたり水売りをしたり靴磨きをしたりして、廃船のなかでひよこと古雑誌と暮らしている。 友達はそんなにいないけどへっちゃらで、なにかあると走る。
とにかく、アミルが走る、少年が走る、全力で走る、それだけの映画といっていい。
仲間との競争だったり、飲み逃げを追っかけたり、飛行機と走ったり、理由はいろいろあるが、とにかく走るのが大好きらしく、いつも思いっきり走っている。
何かの目的に向かって、何かを達成するために、何かを確かめるために、走るのではない。
走るひとは、走るために走るのであって、そこには吐息と叫びと両手両足の歓びしかなくて、ひとはそれを生と呼び、その状態を生きている、という。
そこに「生きる力」なんて必要あるだろうか。 間にあってる。力も金もいらねえ。
これも"Les Misérables"なのかもしれないが、いま見られるべきなのは、断然こっちだよ。
振りあげ、振りおろされる両手と蹴りあげる両足、頬を切る風の音、肺と心臓、狭くなったり広くなったりして近寄ってくる風景、笑い、これらがひとつの像を結び一本の線となってスクリーンの右から左へと走っていく。
そこで呼び覚まされる全身の感覚の瑞々しさは永遠で、ただただ美しい、という。
船があり、飛行機があり、電車があり、自転車があり、海と水と氷と火がある、これらが全てスパークするラストの疾走はどんなライブフィルムより、ネイチャーフィルムより、かっこよく、力強く、盛りあがるの。 こんなガキに、こんなガキに...
上映前の監督の発言によると、アミルはやがて成長して「Cut」の西島秀俊になったのだという。
そうだったのか… どこで整形したのか、その金はどこでどうやって手に入れたのか。
ナデリ監督、上映回ごとにずっと映画館にいて、みんなに挨拶してパンフにサインしている。
えらいよねえ。
見てあげてください。 アミルの瓶を買ってあげよう。
1.06.2013
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