3.13.2023

[art] Cezanne - 他

ロンドンにいた頃の話、たまには美術館まわりも書いてみる。(見た順で。主なところのみ) 
まずは3/2、Victoria & Albertから。

The Raphael Cartoons

前にこんなのあったかしら? って仰け反りつつ(2021年の帰国した頃に仕上がったらしい)。荘厳、しかなくて、あー National GalleryのRaphael展、行きたかったよう、って泣く。

Donatello: Sculpting the Renaissance

この時代のものなら彫刻でも絵画でも無条件で見るようにしている。”Madonna of the Clouds”の、なんで石があんなふうに透き通って雲みたいに動いたりしているようにみえるのか、”David”の、なんであんなに肌がてかってそこに立ってようなのか。

Print and Prejudice: Women Printmakers 1799-1930

ここのコレクションの中から、(主ではないにしても)版画制作を志した女性たちの作品の展示。 彼女たちは一点ものの絵画制作だけでなく、なぜ複製・再生産可能なプリント作品に(も)向かったのか。 Mary Cassattの母と娘の、Berthe Morisotの女の子と猫のエッチングがめちゃくちゃキュートで、これなら手元でいっぱいプリントして配りたくなるよねえ、って。 あとQueen Victoriaの描いた(刷った)ものが2枚あって、これも素敵だった。

Spain and the Hispanic World: Treasures from the Hispanic Society Museum & Library


Royal Academy of Artsの展示でGoyaとVelázquezとSorollaが出ている、というので見ないわけにはいかない。
タイトルにあるHispanic Society Museum & LibraryはNYで1904年に創設されたスペインの文化を紹介する団体で、絵画だけでなく布や陶器や宝飾品や地図や文書まで、いろいろありすぎて個々に見ていたら時間ないので絵画に集中する。Velázquezの”Portrait of a Girl”、一部屋ぜんぶ使ったGoyaも見事だったが、Hermenegildo Anglada Camarasaの”Girls of Burriana (Falleras)”の極彩色のすばらしさとか、数点出ていたSorolla、特に大作”Vision of Spain”(14点あるぜんぶは持ってこれないので)のスケッチとか。

かつての大国スペインにより植民地とされてしまった南米諸国、そこからの移民を受け入れてきたNY、という構図も含めて考えるのが正しいのだろうが、とりあえずあースペインも行きたいなー、しかない。

Cezanne

Tate Modernでの、TateとThe Art Institute of Chicagoの共同開催による大規模展。
この後(25日から)にNational Galleryでは”After Impressionism: Inventing Modern Art”展もあるし、アムステルダムではVermer展も始まっているのだが、自分にとってはまずこれ。これまでどんな小さな美術館にもかかっているCezanneを見るようにしてきたし、MoMA、Metropolitan、Chicago、Washington (National Gallery)、London (National Gallery)、Musée d'Orsayなどなどでひっぱたかれるような衝撃を受けてきた作品のほとんどが一堂に集められてクロニックに、かつ主要テーマ別に並んでいる。Cezanneはどんな絵をどんなふうに描いてきたのかを纏める、というよりも、Cezanneの絵は、なんであんなふうに変わっていったのか、その変化をもたらしたのは何だったのか、というところに着目しているような。 全体の展示構成と順番は以下の通り。あと、カタログには彼の、10年単位でのパリとプロバンスの行き来の量(線)が引かれていて興味深い。

- Becoming Cezanne
- Radical Times
- Family Portraits
- L’Estaque: Between the Sea and the Mountains
- Modern Materials
- Still Life: Continuous Research
- Mont Sainte-Victoire
- Bathers: Tradition and Creativity
- Cezanne: Artist’s Artist
- 1899-1906: Slow Homecoming

前半では当時の画壇の潮流に沿うようなごつごつしていびつで不格好な対象(家族とか)の切り出しと固化があり、周囲に衝撃を与えたMoMAの”Still Life with Fruit Dish” (1879-80) 、そしてChicagoの”The Basket of Apples” (1893) の後、水彩のパレット(あの桃色みたいな茶色と白!)の展示を経ての後半、線も境界も粗いデジタル画像のようにぎざぎざとブレ始め、薄くスカスカの透明感が増していって、その向こう側にカンヴァスの面が浮かびあがる。見るものと見られるものの間に浮かびあがる「存在」のありよう、(どんなふうに、でなく、ただ)ものが在ることとは? という彼の後期の絵を巡る試行とテーマが展示の最後、薄めの髑髏の絵 - と共に浮かびあがる。 – Slow Homecoming

あと、Gettyにある”The Eternal Feminine” (1877)とJasper Jones蔵だったその下絵が並んでいたのはたまんなかった。

見れば見るほど不思議さと謎が浮かびあがっていく。
もしまだ住んでいてメンバーだったらPierre Bonnard展の時のように何度でも見に行くのになー。


Magdalena Abakanowicz : Every Tangle of Thread and Rope

Tate Modernのもういっこの館でやっていたポーランドの繊維彫刻アーティストMagdalena Abakanowicz (1930-2017)の展示。

2018年にTate Modernで行われていたAnni Albers展にはまったように、糸とか布のびろびろ(増殖ぐじゃぐじゃ)には弱いので、狂喜しながら見ていくと、糸、というより荒縄のぶっといのが暴力的に束ねられ捩られて固まって牛の肉塊のようにぶら下げられたり広がっていたりする。たまんない。

Tate Modern、他にはGuerrilla Girlsの展示などもあった。


Action, Gesture, Paint: Women Artists and Global Abstraction 1940-70

夕方、Rough Trade Eastに向かう前にWhitechapel Galleryに寄って見ました。
戦後の抽象表現主義が喧伝したポロックやデ・クーニングやマザーウェルといった米国の白人男性作家以外に、女性にもこれだけの抽象画を目指した画家たちがいたのだ(偏っていたんじゃないの?)、と。有名なLee Krasner (1908-1984) やHelen Frankenthaler (1928-2011)の他に、アメリカ以外にも大勢いて、そりゃそうだろうだし、当たり前のように多彩でおもしろい。

2019年、BarbicanでのLee Krasner展が話題になった際に彼女と同様に抽象に向かった同時代のNYの女性映像作家の特集が組まれたりしたが、あれを更に広範に広げたかんじで、別のコーナーではビデオ映像を中心とした“Action, Gesture, Performance: Feminism, the Body and Abstraction”という展示もあった。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。