6.29.2022

[film] The Lost City (2022)

6月24日、金曜日の晩に109シネマズの二子玉川で見ました。少し前に”The Lost City of Z” (2016)っていうのがあったけど、これは”The Lost City of D”のようで、でもまったく関係はないの。

どれだけこういうバカみたいに空っぽで安っぽい(ほめてる)コメディーを見たかったことだろう。なんかさー、B級ジャンルってカリコレとか、そういう枠で適当に束ねてほれ(餌)って処理されているかんじがとってもあって - ホラー系B級ならまだいいけど、コメディなんかぜんぜんこないし、すごくやだ。

大衆ロマンス小説作家のLoretta (Sandra Bullock)は長髪の筋肉野郎と魔境を冒険して悪の結社とやりあって危機一髪をくぐりぬけてしっとり .. みたいな本を書き続けるのにいい加減疲れていて、新作のブックツアーにもぜんぜん乗ることができずに担当編集者Beth (Da’Vine Joy Randolph)の言われるまま、ぴっちり赤ラメの衣装を着せられて、直前に知らされたトークの相手は長年表紙のモデルをつとめてきたAlan (Channing Tatum)だったのでやる気が海抜以下に下降し、Alanと絡ませられてうるせーってやったら彼のカツラが取れたりさんざんで、自分はこんなんでいいのか? ってなったその傍で英国の富豪のどら息子Abigail Fairfax (Daniel Radcliffe)に拉致されてしまう。

彼女が本のなかでどこかの古代文字を解読していて - 彼女と彼女の亡夫は世界の遺跡を旅する元学者だった - その文字が南海の火山島に眠る宝物を探すカギになるはずだから、手がかりっぽいぼろ布のメッセージを解読して探せ、って迫る。仮想だろうが架空だろうが自分のパブリック・イメージを作ったのは彼女だし、彼女を救うことができるのは自分に決まってるし彼女もそう思っているはずだ、って確信したAlanは元軍人のトレイナーJack Trainer (Brad Pitt)を雇って彼女の足跡を追っかけるのだが、椅子に縛り付けられた彼女を持ちだした直後にJackはやられちゃって、アドベンチャーにもロマンスにもまったく興味のないふたりがAbigailの追っ手をかわしてジャングルを抜けて川を渡ってヒルまみれの半裸の薄着になりながら文句を言いあって、そのうち宝物にも…

Lorettaが書いていたような小説もAlanが体現していたようなマッチョなモデル(Fabio?)も結末が見えみえの“Romancing the Stone” (1984)みたいな冒険活劇も、ひと昔前のあの時代にはまじでどーでもいいプラスティックな暇つぶしとしてあったわけだが、この映画ではそれらが歳を重ねて自分の声を持ったり回顧らしきモードに入り始め、それらのやや切実な声が失われた都市(の財宝)を捜すスクリューボールの旅に重ねられることで不思議なリアリティをもって転がり始める。マルチヴァースに飛ばされて玉突きされて覚醒したあれ、に近いなにかなのかも?

そして”Speed” (1994)の頃から巻き込まれたら天下一品の延焼パニックぶりを見せてくれたSandra Bullockも、実はただの筋肉バカじゃない演技だってできるんだぞのChanning Tatumも、それぞれの十八番をメタになぞるようでいて、そこからするりと抜けてぶっとばす芸当をこの逃亡劇のなかでやっているように見えて、驚くべきことにそれは前世紀末のしがらみを超えてWorkしているようにみえた。気がした。"The Lost City"は見つからなかったかもしれんが。

これが80年代のアクション映画だったらブラピはもっと忍者のような神出鬼没の活躍を見せたはずだし、悪漢Daniel Radcliffeは火山の溶岩でどろどろに焼かれてしまったはずだし、Sandra Bullockには亡き夫の声が聞こえてくるはずだし、Channing Tatumは本当の自分を見つけられたはず。でもこの映画ではどの連中もそうはならない。 ただ、たぶん真ん中のふたりは永遠の愛を.. その背後でファンファーレのように流れてくる”The Final Countdown”がまた…

ほんとうはSandra BullockはF.B.I. Agentだったし、Channing Tatumは警官だったりG.I. Joeだったりしたのだし、Brad Pittだってエージェントだったのだ、って二段重ね構造にして互いに殺し合いを始めたりしてもおもしろかったのに。そうすると木の棒で戦うしかないDaniel Radcliffeがちょっとかわいそうかも。しかし彼って南の島、ぜんぜん似合わないよね。


The Fallの鈍器本がきた。もっと重くてもよかったのにな。

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