5.27.2021

[film] Me and My Gal (1932)

ここからは日本に来てからの、になる。5月17日、まだあのホテルにいた時に見ました。

目の前の現実にうんざりしているときに最近の作品を見るのは、どこか地続きなかんじがして嫌で無理で、見るなら昔のクラシックがいいな、になってしまう。そこで見つけたのがMoMAのストリーミングで“Pre-Code Fox Rarities from the MoMA Archive”ていう特集。MoMAのアーカイヴにあるPre-Code時代の作品のうち4Kリストアされたものを3本選んでいる。(他にももっとあるはずだいっぱい見せろ)

見た順番は、日替わりで“Quick Millions” (1931) → “Me and My Gal” (1932) → “Sherlock Holmes” (1932)。どれもそれぞれにおもしろかったのだが、やっぱし書くならこれかな、と。

監督はRaoul Walshで、たぶん大昔にFilm Forumとかで見ているやつ。Busby Berkeley - Judy Garlandの”For Me and My Gal” (1942)とは別のだから。邦題は『金髪乱れて』 - ここのJoan Bennettはショートでちっとも乱れないんだけど。

NYの波止場 – Pier 13近辺で働く警官のDan Dolan (Spencer Tracy)がいて、日々よれよれ酔っ払い爺さんの相手をしたり忙しいのだがアイリッシュ系で腕っぷし強くて威勢がよくて、海に落ちたよれよれを救って刑事に昇進したりする。彼がそこのダイナーのレジで働く、これも威勢のいいねえちゃんのHelen (Joan Bennett)とぶつかって、なんだおめー、なによあんた、って互いにプチ火花を散らしながらもなんとなくにじり寄っていくの。

Helenの妹のKate (Marion Burns)はかつてギャングの大物Duke Castage (George Walsh - Raoul Walshの弟さん)と付き合っていて、でも彼が南米に高飛びしちゃったので堅気に戻ろうと、メガネの生真面目がり勉くんと結婚しようとして式もめでたく執り行われるのだが、Dukeが戻ってきて牢屋に入れられたという新聞記事を見てひとりざわざわする。案の定、Dukeはさっさか鮮やかに脱獄してKateの実家に現れて、そこの隠れ部屋に潜伏する(Kateは動揺して、でも誰にも言えないまま平静を装う)。そこにいるのは体が不自由でずっと椅子に座っていて、目の瞬き(信号)だけで会話する父のPop (J. Farrell MacDonald)だけで。

なんだかんだHelenとつき合い始めて彼女の実家にもやってくるようになったDonは、Kateの様子が少し変わったのとPopの様子でここにはなにかあると気付き始めて…

79分の長さなので、なにをやるにもちゃっちゃか進んでいってあっという間、この小気味よいテンポにSpencer TracyとJoan Bennettの素敵すぎる波止場のふたりのやりとりがぴったりはまって気持ちいいったらない。最初の方のつんけんした弾きあいが事件の進行と共になし崩しで溶けていって、最後に… は、表も裏もないrom-comの王道でもあるの。どーってことない帽子をめぐるやりとりにいーなー、ってなる。

あと、いっつも感心するのはRaoul Walshの喧嘩アクションの見事さよね。John Hustonもそういうとこあるけど、決してあんなふうに殴られたくないけど、コレオグラフィとしていつもひー、ってほれぼれ見てしまう。

これがPre-Code時代の作品で、でもPre-Codeだから、Codeを意識して好きに作ったからおもしろい! ってものでもなくて、Hays Code以降だって工夫しておもしろいのはいっぱいあるし。ていうのを考えていると、これとは全く別の次元の話だけど、最近ちょこちょこ目にするポリコレが表現を殺す、とかいう議論(にすらなっていない)を思い出す。政治嫌いの子供がボクは政治が嫌いだから嫌いなんだ、って駄々こねているだけの浅くて幼稚で愚かなやつ。こういうボクを大勢で育ててしまったのが、日本のメディアと業界なんだねえ。本当にやだ。


日々なんか眠くて、そのまま寝てしまうので、時差ボケが消えない、というか単に時差ボケのせいにしているだけなのかもしれない、というくらいどうしようもなく眠い。元々WFHの頃から眠くなったら昼寝する、とかふつうにやっていたので時差が来たって関係ない、とか思っていたのだが、午後遅くになると寝てしまって、朝は3時くらいに目が開いてしまう。 なにか熱中できる仕事とかがあればまた別なのかもしれないが、あんまなさそうだし、世界はひどいし、外には出れないし出たくないし。 このまま芋虫になってしまえばいいんだわ、とか。 

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