5.13.2021

[log] May 12 2021

今週に入って漸く初夏のかんじが見えてきて - 昨年のこの時期はロックダウン初期で気候には敏感だったのでつい比べてしまう - 来週からは映画館も美術館もオープンするので、こんなにうれし悦ばしの時期はあろうか、なのだが、自分はここから離れようとしていて、なんとか引越しを終えて(ぼろぼろ。年齢的にもう二度とムリ)、アパートを引き払ってロンドン内のホテルに移った。どのタイミングでその場所を離れた/その場所と別れたと言えるのか、というとふつうに物理的には飛行機がそこを離陸したところかと思うのだが、4年間のあれこれで積もったり溜まったりした荷物が一旦全部手元を離れて、住んでいたところを離れて、なのかなあ、って。いまはスーツケースがいくつかあるだけなので、旅の準備を済ませた旅行者のかんじになっている。

向かう先のことは向こうに着いてから書くとして、ここでは4年間よかったなーありがとう、ということについて書きたい。ありがとう、の宛先をどこに置くべきか。英国、という国に向かってそういうのを言うのはちょっと違うかんじがして、身の周りとか旅先とか日々の周辺100mくらいで起こったことに向かって、になるのだと思う。

赴任が決まったとき、仕事がどうなるかとか職場がどうだとかは割とどうでもよくて、まず思ったのは絵画とか映画をいっぱい見れたらいいな、見よう、と強く思った。もう歳とって目も耳も頭もその奥のほうもぜんぶ濁って悪くなって腐り始めていて止めることはできそうにないので、これがいろいろ見たり学んだりすることのできる最後の機会になるだろう。ヨーロッパのあの辺でそういうのができるのであれば、これって目が眩むくらい素敵なことではないか。

こうしてExcelに行った場所(遺跡旧跡)、見た映画、見た展示、などを1行づつ入れていったら4年3ヶ月で2520行くらい入っていた。「フィルム」でフィルタかけると1602、とでる。アートだと639。映画には短編も含まれるしロックダウンに入ってからのストリーミングで見たのも含まれるからそんなもんだろうけど、結構みた方だと思うし、日本にそのままいてこの本数を見れたかというと、たぶんムリのような気がする。美術館のほうも、これだけは絶対、とかイキらずに見れるのを見たい時に見よう、って地味に追っていったらいろいろ見れたしよかったな、って。 もちろんまだ見れていない必須のなにかは山ほどあるけど、そういうのばかり追っかけていくのも、それはそれでつまんなくないかしら。

あと、生活に近いところだと食べ物がすばらしく素敵だった。イギリス飯はまずい、というよく聞く物言いは一切無視して - だいたいさあ「飯」っていうのがお前だれ? だし、まずいってどの舌がいうのか、これって駐在のじじい共が偉そうに語りたがるどこの国に美人が多いか、とかと同じものすごく破廉恥で高圧的なあれよね - ヨーロッパのいろんなところから来る野菜はおいしいし、チーズ – フランスのはもちろん、英国のチェダーやスティルトンのすごいのなんて冗談みたいに安くて豊富だし、肉も魚もとても濃い風味だし、スコーンとクロテッドクリームの恐ろしさときたらなんなのか、って。ロックダウンでレストランが開かなくても、葉物とパンとチーズだけでもぜんぜん平気になってしまう芯の強さ。

レコードと本の話はもう書いたけど、ここは改めて文学の土地なんだなー、って。レコ屋も本屋もいっぱいあって天国というか地獄というか、それを巡る旅のあれこれを書いていったらきりがないのでどこか別の機会にしたいのだが、古本との出会いは本当に大きかった。特にThe Second Shelf - 最後に訪ねたのもこのお店だった – については感謝しかない。この店がある限りロンドンにはこれからも通うことになるのだと思う。

そして、こういうのが至るところにあるのがロンドンなので – NYがいまだにそうであるように -  1日でも2日でも戻って走り回ることができるように日々を過ごしたい。とりあえず、当面のねらいは2022年のラファエロ展、だろうか。

なんかまだいっぱい書きたいことだらけなのだが、眠すぎるので切ります。

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