5.09.2021

[film] Conte d'automne (1998)

4月28日、水曜日の晩、Film ForumのVirtualで見ました。ロメールの四季の物語を順番に見ていくシリーズの、これが最後の。英語題は”Autumn Tale”、邦題は『恋の秋』。

フランスのローヌでワイン農家を営んでいるMagali (Beatrice Romand)がいて、40代半ばで子供ふたりは既に大きくて未亡人だけど仕事にも打ち込めるし充実した日々を生きていて、髪はぼさぼさでノーメイクで格好も自由きままで、でも笑顔が素敵だしお話していて楽しいし、このままずっとひとりでいるのはもったいないのでは、ロメールの映画の主人公であるならなおのことって、周囲は思ってしまうらしい。

親友のIsabelle (Marie Riviere)はもうじきの娘の結婚を前にMagaliの農場で一緒に午後を過ごして(一瞬出てくる猫がかわいい)、新聞に恋人募集の広告でも出してみたら? と振ってみるのだが彼女からは冗談でしょ? って軽く蹴られてしまったので自分で広告を出したらGerald (Alain Libolt)が現れて、3回くらいデートしてふたりがなんとなくよいかんじになったところで、Isabelleはごめんなさい、つきあってほしいのはあたしじゃないの、って告げる。え? なにそれ? ってGeraldは未練たらたらになる(なるよね)のだが、なんとか堪えて持ちこたえてMagaliと会うことに同意する。

もうひとり、Magaliの息子のLeoと結婚直前まで行ったRosine (Alexia Portal)も、Leoはどうでもよくなってしまったものの、Magaliのことが大好きなので、Leoの前につきあっていた哲学教師のEtienne (Didier Sandre)はどうだろうか、って思って、自分が捨てた男をあてがうのってどうなのか、って少し思うし、EtienneはやはりまだRosineの方に気があるようなのだが、Rosineが強く薦めるのなら会ってみようか、と。

こうして決行の時はIsabelleの娘の結婚式の披露宴、て設定されて、Magaliのまったく知らないところで二組の - こっちも互い計画のことは知らない - お見合い作戦が、それぞれに執り行われようとしてして、どうなっちゃうのかしら。

これまでのロメールの四季のって、主人公である恋愛の当事者たちがそれなりの時間と考察を経て自分で決断をくだす物語だった気がするのだが、今回のは、Magaliを恋愛の主人公に引っ張りあげようとする周囲の駆け引きがまずあって、Magali本人が恋愛のステージに立つまで、をMagaliの周囲の人々がそれぞれの頭のなかで妄想したりシミュレーションしたり、そうやって他人の恋に酔っぱらっていく様がおもしろい。

そして披露宴の人混みのなかでふたりの男性と偶然とは思えないようなかたちでぶつかって出会ったMagaliも、これってどういうことなのだろう、って考えこんでしまう。恋愛のケミストリーとは違うかたちでこちらにやってこようとしている何かを自分はどう受けとめるべきなのか、これに乗るべきなのか、乗ってしまうのは正しい選択なのか、とか。そして、こういう思考とか逡巡のプロセスって既に恋愛のそれと言えるのだろうか? (本屋やレコ屋で買うか買うまいかうーむ、って腕組みして悩んでいるのってこれと同じなのか違うのか?)

友人たちの企みに気付いて激怒したMagaliが披露宴の夜闇と喧騒のなか、ひとりまたひとりと殺戮を始める、方にはもちろん行かなくて、この宴の賑わいが彼女(たち)を深い沈黙と静かな決断に向かわせる。これを『緑の光線』で恋愛とか運命に恋していたMarie Riviereと、『美しき結婚』で自分は自分が最高と思う男と絶対結婚するのだ、と爆妄していたBeatrice Romandという、恋愛中毒ど真ん中だったふたりが演じている、のが趣深い。いくつになっても恋愛ばんざい、なんていうのとはもちろん違う。

これが凍てつく孤独な冬に向かう手前の仕込みとか準備なのだとしたら、なんかいいかも。Magaliがワイン農家である、というのもそういうことなのかも。で、これがロメールの今の時代の恋愛模様を描いた最後の作品となった、というのはなかなか感慨深い。

自分の子供の披露宴なのに家族をほったらかして親友の恋愛にはらはらしているIsabelle、すごいなえらいな、とか。


いよいよ箱詰め大会がはじまったにのでこういうのを書いている暇もなくなってきたのだが、あまりの物量にあきれ慄いている。ヴァーチャルの見積もりを貰ったら船便の規定枠より少なかったので「おみやげ」を深く考えずに買っていったバチ、というか。前回NYから帰国した時のそれはレコード中心だったのでOther MusicとかAcademyでじゃんじゃか買いまくったものだが、今回のは圧倒的に本で、これってネットでも買えちゃうし容積も重さもレコードとは比べもんにならないのだわ。 おてあげだわ。 あと、いろんなとこのチケットの半券とかチラシとかパンフとかの堆積も。 むかしはチケットを手でもぎっていたんだねえ、って.. 2020年6月にいく予定だったJawboxのチケットとか出てきてさあ(泣)。

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