5.25.2021

[film] Touchez pas au grisbi (1954)

4月26日、月曜日の晩 - もう一ヶ月も前なのかー、MUBIで見ました。
英語題はなくて仏語のままで、USの公開時のタイトルは”Grisbi”(獲物)、UKの方は”Honour Among Thieves” 、邦題は『現金に手を出すな』(げんなまにてをだすな)- これなら聞いたことある。原題をそのままDeepLにかけると『灰色のものに手を出すな』 - 灰色のもの? 。

監督はJacques Becker、原作はAlbert Simoninの同名小説で、原作者は脚本にも参加している。小説の方はここのMaxを主人公とする三部作になっていて、どれも映画化されている模様。 Jean GabinはこのMaxでヴェネチアで男優賞を獲っている。

フィルム・ノワールの闇に蠢く非情さはあまりなくて、でも、だけど、すばらしくおもしろいギャング映画だと思った。

初老のギャングMax (Jean Gabin)は相棒のRiton (René Dary)と若いキャバレーの踊り子ふたり - Josy (Jeanne Moreau)とLola (Dora Doll)と行きつけのマダムの店で遅めのディナーをとって、そこに若弟子のMarco (Michel Jourdan)も加わって、みんなでキャバレーに行く。ここでの彼らの会話や目のやりとり、表情、態度などでMaxもRitonもギャップをかんじて疲れていて(あれこれついていけなくなっていて)、でもやや必死でそれらを取り繕おうと - なんでもないし、って顔をしていることがわかる。

MaxとRitonはこの少し前に5千万フラン金塊の塊8つをまんまと強奪していて、あとちょっとで幸せな老後になるはずだったのに、Ritonがそれを付き合っていたJosyに話して、Josyは二股かけてた若ギャングのAngelo (Lino Ventura)にそれを話してしまったものだから、帰宅途中に怪しい連中に追われたりして、Josyの二股の様子を見てしまったMaxはRitonに、知られているようだから気をつけろ、っていうのだが既に遅くて、彼はAngeloの一味に連れ去られてしまう。

MarcoがAngeloのとこの間抜けなちんぴらを捕まえてMaxがそいつをクラブのオーナーで盟友のPierrot (Paul Frankeur)のところにひったてて拷問しようとしたところでAngelo側からRitonと金塊の交換取引の電話があって、Max, Pierrot, Marcoの三人はそれなら、って武装して取引の場所に向かうの。怒りも脅しもなく、そうですか行きます、みたいなかんじで。

最後の20分くらいはどきどきはらはら怒涛の結末、というよりもものすごく落ち着いた、食事でもとるかのような優雅な身振りと、でもミスしたらぶっ殺す - 実際しぬよ、っていうつーんとした緊張感に溢れているのに、激しい銃撃と手榴弾の炸裂とカーアクションが連続してて痺れる。でもじたばたどたばたしていない。

所謂やくざっぽいダーティワードや不良っぽい素振りや下品な慟哭とか怒りとかエモの乱れみたいのは一切なくて、全員が最後まできちんとスーツネクタイで、やることをやるだけみたいな迷いのない直線の動作に貫かれていて、カメラはそれを向こう側とこちら側でひたすら追っていくだけ。銃撃戦ですら釣りでもしているかのような落ち着きがあってスタイリッシュで、あれってなに? 銃撃戦だけじゃなくて、例えばAngeloの手下を縛りあげて拷問することになったときの、太った丸メガネのPierrotのきびきびした無駄のないバレエのような動き - それだけで真性ギャングの凄みが伝わってくる。

Jean Gabinも同様で、身内への面倒見とか気前のよさはたっぷりで、恋人になるBetty (Marilyn Buferd)にもずっと紳士として振る舞うし、迷いとか悩みは一切ださなくて、基本はぜんぶひとりでやる、やるとなったら徹底的で、ふつうに喋りながらビンタしまくるのとか冗談のようにすごくて怖くて。このひとは寝る時もタイとスーツ姿なのではないか、とか、不死で数百年生きているのではないか、とか、やや古いけど『さようなら、ギャングたち』で定義されたギャングってこういうのだった気がする - そういう抽象性みたいのがあって。ああいうギャングには憧れるなー。

あと、あのジュークボックスがほしい。


まだ自宅隔離期間だし、ろくな調理器具もないのでほぼずっとUber Eatsでなんか取って食べているので、近辺の出前事情には結構詳しくなったかも。それにしてもすごく肉肉しいし、麻婆豆腐とか辛くて濃いのが多いし、これがフードコートだったら「ないわ..」って素通りしちゃうかんじかも。若者向けなんだろうな。

壁の奥に埋め込まれていたハブを取り替えて、ようやくWifiが使えるようになった。なにから見ようかしらん。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。