1月31日、日曜日の晩、Criterion Channelで見ました。
ここの1月末で見れなくなるリストから、Barbra Streisand監督作を見ていくシリーズの最後。彼女の監督キャリアのなかでは2作目。 邦題は『サウス・キャロライナ 愛と追憶の彼方』..
Pat Conroyの86年の同名小説が原作で彼自身が脚本にも加わっていて、はじめは映画化権をRobert Redfordが取得して自分の監督・主演で企画を進めていたがスクリプトに納得がいかなくて、熱意を示していたBarbra Streisandの方に譲った、とか。
サウスカロライナで教師とフットボールコーチをしているTom Wingo (Nick Nolte)は妻のSally (Blythe Danner)と子供達とほぼ幸せに暮らしていたが、母のLila (Kate Nelligan)から呼び出されて、NYで作家/詩人として暮らすTomの妹Savannah (Melinda Dillon)が自殺未遂をして入院したというので見てきてくれないか、と頼まれる。LilaはTomの父とは別れて地元のお金持と再婚しているので体裁とか気になるらしい。
Tomはぜんぜん好きじゃないというNYに飛んでSavannahのアパートに滞在して彼女の担当の精神科医Dr. Susan Lowenstein (Barbra Streisand)とのセッションを始める。大声で身振りも派手な南部男の典型Tomと地味クールな東部女の典型Susanはまったく噛み合わないのだが、Savannahの自殺(これが数度目)の原因を掘るためにWingo家の過去 – DV野郎だった海老漁師の父、それにうんざりして逃げようとしていた母、亡くなっている兄のLuke – と当然自分のことを話さざるを得なくなる。それと対面するSusanはSusanで著名なヴァイオリン奏者の夫(Jeroen Krabbé)がいつもツアーで不在で、放置されている息子のBernard (Jason Gould – BarbraとElliott Gouldの間にできた実子)の扱いに困っていたりする。
セッションばかりだと疲れるし、とSusanにも請われてTomはセントラルパークでBernardにフットボールのトレーニングを始めて、そういうのを通してTomとSusanの距離が少しずつ縮まっていく。 のだが、映画のキモはSavannahの自殺未遂の遠因近因になっている可能性があってTom自身をいまだに苦しめている(セッションを続けてもなかなか表に出てこない)Wingo家の呪われた血と運命のようなやつで、陰惨な過去の事件も含めてこれだけで1本の映画になりそうな重さなのだが、これと対照的に疎結合な家族からぽつんと切り離れているSusanがそういうのを聞いて南部の男に引き寄せられていく、というのもまたドラマとしてはある、のだろうか?
Tomが経験してきた – そして今もSallyから別れを切り出されたり - 苛酷な、逃れられない運命については説得力があるし、夫から疎遠にされたままBernardまでヴァイオリンの勉強のためTanglewoodに去られてしまうSusanがかわいそうなのもわかるし、そんな孤独なふたりが雑多で騒がしいNYで恋におちるのもわからなくはない、としよう。塊のでっかいロマンとしては背景もキャラクターもきちんと描きこまれてテンポも申し分ないのだが、でも、そもそものきっかけとしてあったSavannahのことは? 彼女が解離性障害で別の人格で本を書いていたこととか、最後に退院してよくなったことはわかるんだけど、自殺の本当の原因はどこの何だったのかってきちんと明らかにされたのかしら? そこがぼやけたままだとサウスカロライナに戻ったTomの家でまた同じようなことが繰り返されたりしない?
その辺の物語を積みあげる境界線が少しだけ気になったのだが、ストーリーの手ごたえ見ごたえみたいなのははっきりとあって、”Yentl” (1983)と同じように主人公の内面に丁寧に向き合おうとする画面の造りはとっても映画っぽいので、厚めの本を読むみたいに見るのがよいと思った。
Nick Nolteはわかるけど、身近にいたらうざそうだなー、ああいう大振りな野郎が好きなひともいるんだろうなー、とか。南部の人ってやっぱしちょっと苦手かも、とか。 これが英国の方に来ると(土地の物語に収斂させようとしたら)スコットランドとかウェールズになるのかなあ、とか。
一瞬、Balducci's(マンハッタンのグローサリーストア)の昔の紙袋が映ったとき、きゅんとした。
Chick Coreaが亡くなった。 レコードはあまり持っていないのだが、NYにいた時、彼(といろんな人々)のライブはほんとによく行った。彼とGary Burtonのデュオのは調べたら2001年だった。 もう20年前かあ… ありがとうございました。 ご冥福をお祈りします。
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