2月15日、月曜日の晩、Netflixで見ました。
監督は”White God” (2014)のKornél Mundruczó。脚本はこれまでも彼の作品の脚本を担当してきたKata Wéber。ふたりは夫婦で、ここで中心のテーマとなる悲劇はふたりの間に起こったことだという。 邦題は『私というパズル』 ?.. がっかりうんざり。謎解きものでもなんでもないし、タイトルに「女性」を入れなくてどうするのよ。
9月のある日、港湾で働くSean (Shia LaBeouf)の難しそうな仕事の描写に続いて、ベビーシャワーの送別の後に出産一時休暇の荷物を持って職場を出るMartha (Vanessa Kirby)がいる。ふたりが自宅に着いたらすぐに出産が始まって、最初から自宅出産の予定だったので助産婦 - 最初に頼んでいた人が来れなくなったので替わりのEva (Molly Parker) – がやってきて、準備もなにもすぐに生まれそうであることがわかり、途中心音が.. とかいろいろ恐ろしいのだが、なんとか子供は出てきて産声をあげて、その歓びもつかの間、すぐに子供の容態はおかしくなって救急車を呼ぶことになり…
以降、ほぼ一ヶ月ごとに辛い日々のある一日が断面のように描かれていって、彼らの子の死因は結局特定できなかったのだが、Marthaの母のElizabeth (Ellen Burstyn)と妹夫婦は彼女のいとこで法律事務所にいるSuzanne (Sarah Snook)に依頼して助産婦に対する訴訟(懲役と巨額の慰謝料)を起こそうとしている。その横で焦燥しきったMarthaは職場に戻っても幽霊のようで、Seanとの間もお互い歩み寄ろうとするものの徐々に壊れていって(SeanはSuzanneと浮気している)、ふたりの家の中も植木は萎れて荒れたままに放置されている。
亡くなった子の葬儀の準備でも遺体を病院に寄付しようとするMarthaにElizabethたちが反発したり、墓石の字体をMarthaのいないところで勝手に決めたりしていたことで揉めて、Martha vs. Elizabeth, Seanのような構図(ただ、ElizabethはSeanのことをよく思っていない)ができあがっていって、年末にElizabethの家(とても裕福であることがわかる)に家族全員が集まったところで訴訟の件を巡る対立 - もういいかげんにして - が顕在化する。
終盤は助産婦のEvaを被告とする法廷ドラマになるのだが、ここの箇所、法律の技術観点でMarthaが納得していないのに、死因が特定できていないのに法廷に持ち込むことって可能なのか、とか。この映画の論点、というか一番言いたいことは、あなたとあなたの子のためにも法廷で戦わなきゃだめだ、と強く主張するElizabeth(とSean)に対して、これはわたしのBodyのことなのになんで? なにそれ? とぶち切れるMarthaのやりとりに集約されていると思うのだが、この件を通してすべての悲しみと辛さを背負いこんだMarthaがここから(彼女のBody, 彼女のPieceから)どうやって立ち直るのか、ラストのリンゴの木のところまで行けるのか、というストーリーとElizabethやSeanとの関係と法廷の件とがうまく噛みあっていないような気がした。
それくらいに、細かいことに構っていられないくらいの喪失感で消耗していたのだとしても、感情的なしこりのようなものしか残っていないのだとしても、いや、だとしたら余計になんで? とか。 同じ事情で苦しんだ/苦しんでいる夫婦は少なくないのだろうから、時間が掛かってもきちんと丁寧に積みあげるべきだったのではないか。
それに加えて、ハンガリーのユダヤ人としてナチの迫害を生き延びたElizabethの母(Marthaの祖母)のエピソードを掲げて、だからこそあなたにも強くあってほしいのだ、というElizabethの説得とMarthaの対話も噛み合わないであろうことは十分にわかって、だからこそもう少し掘り下げてほしかったかなあ、とか。
あとはこの件における夫Seanとか車のディーラーをしている義弟のChris (Benny Safdie)といった男性 – 彼らはいつの間にか画面から消えているよう - の居場所とか立ち位置ってどういうものなのか。 きちんとした答えなんてあるものではないけど、あんなふうに画面からいなくなったままでそれでいいの? とか。
Vanessa Kirbyさんというと、元気いっぱいだった“Fast & Furious Presents: Hobbs & Shaw” (2019)が記憶に新しいが、こんなふうに崩れていくメロドラマもすばらしいのね。あと、Safdie兄弟のひとりがいかにも、なかんじで出ていたり。
英国のロックダウン緩和のステップと日程が発表になった。いろいろ遅すぎて絶望しかない… あーあ。
2.23.2021
[film] Pieces of a Woman (2020)
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。