6.17.2014

[film] 牝犬 (1951)

10日の火曜日の晩、神保町シアターの特集「エロスのある風景」で見ました。

「エロスのある風景」と「エロい風景」はちょっとちがうねえ。

志村喬は保険会社の会計部長で学歴ないところからの叩きあげが自慢で、毎朝乾布まさつとかして元気いっぱいで、でも妻(北林谷栄)はひょろひょろ病弱で、ロンドンにバレエ留学したいと言っている娘(久我美子)にはバカいうな、とか説教する。

会社の金を着服した部下が場末のクラブで踊り子のとこに入り浸っていると聞いた彼は、日帰り出張の帰りにそのお店に寄ってみたら、もんだいの踊り子のエミー(京マチ子)に会って、そこで会社のお金300万円が入った鞄を失くしてしまう。動転した彼はエミーの言われるままに彼女の部屋についていったらそこが思うツボで、まんまと毒蜘蛛に食べられちゃうの。

翌日から彼は会社に来なくなって家にも帰っていなくて、調べてみたら女と失踪しました、と。
それを聞いた妻は白目を剥いて(ほんとに白目むくの)へなへなと崩れおちてしまう。

秋が来て冬が来て、あれから1年、どこかの港町のどこかのバー、その横の床屋に突然ぱりっとリボーンした志村喬が現れるのでびっくりするのだが、彼は会社のお金で買ったのであろうそこのバーと踊り子集団(含エミー)のオウナーで、エミーは彼のことを「パパ」とか呼んで幸せらしいのだった。 が、エミーはバーの楽団に入ってきた若い白川くんにめらめら燃えあがってしまい、パパは嫉妬がすごくなって、でろでろのド修羅場になだれこんでいくの。

最後のほう、堕ちるとこまでおちたふたりの負のパワーが激突するあたりの暗い画面はほとんどホラーで、特に闇のなかで怪しく光るエミーの目は牝犬というより化け猫のようで、結末は意外でもなんでもなく、あたりまえのように救いようがなくてよかった。 鞄をなくしたらまず警察に行くことね。

ラストの志村喬の後ろ姿はすごい。きっとこの翌年(52年)の「生きる」はこれの償いで作られたにちがいない(見てないけど)。

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