1月19日、木曜日の晩、新宿の武蔵野館で見ました。
邦題は『カンフースタントマン 龍虎武師』。英語題は”Kung Fu Stuntman”、英語版(?)ポスターにはでっかく”NEVER SAY NO!” ってブラック企業みたいなコピーが。
70〜80年代(もちろんまだ続いている)のカンフー映画を生みだしたショウ・ブラザーズやゴールデン・ハーベストといったプロダクションの興隆と、個々の映画を裏で表で支えたスタントマンたちはどんなふうにそこに関わったり働いたりしていたのか、アーカイブ映像と関係者インタビューを中心に紹介していく。インタビューはドニー・イェン、ブルース・リャン、ツイ・ハークとか、沢山の現場にいたスタントマンたち。ジャッキー・チェンが出てこないのが気になるところ。
映画のなかで何度も繰り返されるように、彼らの捨て身の勇気と献身(半ば強制によるものだったとしても)なしにこれらの映画は成り立たなかったし、彼らの中から後のスターも育って出てきたのだし、人材調達の仕組みとしてはよかったのかもだけど、そのうちに求められるアクションがあまりに危険すぎてレッドゾーンを超え、それらがワイヤーやCGによって代替可能になった辺りから下火になっていった – のはなんとなくわかる。
この程度のことなら映画を見なくたってわかっていたに決まっていて、なんで見に行ったかと言えば過去の映像を振り返ってあったあったねえ! これ! ってやりたい - それだけなの。
ブルース・リーが最初に盛り上がったのはまだ小学生の頃、でも見た人の話を聞くと氷で固められた死体を切り刻んで流すー、とか言われてそんなの見れないや(いまだに見てない)って。なので最初はやはりジャッキー・チェンのいろんなのに触れて、それらはまずコメディっぽくてとっつきやすい気がしたし、だいたい二本立てでお得で入りやすい気がしたし、実際にそうだった。今でもいくつかのシーンはキートンのスラップスティックに並ぶ至芸だと思っている。
最初は『おじいちゃんはデブゴン』(2016)に出て監督していたサモ・ハン・キンポー - おじいちゃんの回想から入る。まずは京劇だった。『覇王別姫』(1993)にあったような京劇の厳しい訓練で鍛えられた身体能力を活かして手っ取り早くお金に替える場として撮影現場でのスタントは需要があって、その場面がうまくいって映画が当たって儲かるとアクション = スタントに求められる難易度も報酬もあがっていって、それをクリアできる/できないでスタントマンのなかから主役をはったりする者が現れ、サモ・ハンもジャッキー・チェンもユン・ピョウもそうで、この辺はみんな知っているしスタントシーンの大変さも各映画のエンドロールにでてくるNG集と共に有名よね。
でもこんな命知らずの猛者たちに頼るしかないぎりぎりの現場をずっと維持できるわけはなく、ハリウッドに行ったりワイヤーアクションやCGも普通になってスタジオも潰れてスタントマンへの需要は減って、でも最近になってOBが中心となって後進を育てる取り組みを始めた、って。
関係者が口を揃えていうように、もうあんなことは二度とできない、って。確かに映像で見たらそりゃそうでしょ、しかないようなすごい怪我や惨事をみんないっぱい経験しているし、亡くなった人もいるって言っていたし、映画のなかで語っている人たちはみんな現場を生き抜いてきた「成功者」なので口を揃えて自慢して讃えあうのはわかるけど、きつい人には相当しんどい現場だったのではないだろうか... なんの確証もないけどなんとなく。 そういうところも含めて、過去の、歴史の遺産として接するしかないかなあ、って思うとちょっと悲しかったかも。
カンフーアクションそのものの可能性、みたいなとこで言うと、登場人物の周りの事物や建物もふくめて洗濯機みたいにがらがら回して転がしてぶっ壊しまくる- EEAAOみたいのと、人と人の真剣勝負のなんでもあり格闘技の一部 – John Wickみたいなのに分化していって、これは好みの問題でしかないかもだけど、やはり前者のほうが楽しくて、そういう点ではEEAAOってすごくよい映画なのかも、って改めて思ったりした。
2.01.2023
[film] 龍虎武師 (2021)
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