10月10日、日曜日の午後、日本橋のTOHOシネマズで見ました。
この日は東京芸術祭での太陽劇団シネマアンソロジーの一日券を買っていたのだが、直前に同じ日の午後にこれがあったのを知って、うーんと悩んでこっちにした。 『アリアーヌ・ムヌーシュキン:太陽劇団の冒険』(2009) を見た後、池袋から日本橋に移動する。
シェイクスピアの『十二夜』は大好きで、舞台での上演を最初に見たのは2003年の2月、BAMのHarvey Theater(当時)に英国からthe Donmar Warehouseが来たときので、演出Sam Mendes、主演Emily Watson(”Punch-Drunk Love” (2002)の直後だよ)に惹かれて見にいったのだが、今調べたらキャストにHelen McCroryやMark Strongも参加していたのだった。あと、もう1本、同じツアー/メンバーで『ワーニャ伯父さん』もやってて、どちらもものすごくおもしろかったし何かを焚きつけられた記憶があるのだが、どのへんが? についてはあまり残っていない(こういうのが恐ろしいのでこのサイトをはじめたの)。
この時の『十二夜』も現代のコスチュームを使って女性が多く入っていたが、今回のもそうで、スチール写真を見るとなんかけばけばしていてどうかしらー、だったのだがその程度で揺らいでしまうシェイクスピアではないし、やっぱしものすごく笑えて楽しくておもしろいよ。197分あっという間。
演出はSimon Godwin。舞台セットはでっかい尖がり△が中央にそびえていて、これがぐるりと回転しながら、難破船になったりお屋敷になったり盛り場になったり階段になったり。〇(まる)の柔らかさ自在さ、□(しかく)の真面目さ堅牢さの中間にある、構造とか繋ぎ目とか倫理とか、そのとんがった様相。
あらすじはいいよね。船の難破で離れ離れになった(互いが互いを死んだと思っている)双子の兄Sebastian (Daniel Ezra)と妹Viola (Tamara Lawrance)がいて、Violaは身を守るため性別をひっくり返して男子の小姓Cesarioと名乗って公爵のOrsino (Oliver Chris)に仕える。Orsinoは伯爵の娘Olivia (Phoebe Fox)にずっと求愛しているのだが、ViolaはOrsinoが好きになり、お使いに行った先でCesarioはOliviaに惚れられてややこしくどきどき危なっかしく横に転がっていく恋の脱線小噺と、Oliviaに熱烈にお仕えする執事のMalvolia (Tamsin Greig)がOliviaの叔父の遊び人Sir Toby (Tim McMullan)とやはりOliviaに求愛しているSir Andrew (Daniel Rigby)のバカコンビのおふざけとおちょくりに巻きこまれて縦方向に吹きあがる騒動の顛末。
ばれてはいけない事実やからくりが重力でゆっくりボタンが外れるようにして外れ、それによって覆っていたもの覆われていたものが劇構造まで含めてむき出しになる瞬間の快感(笑い)、あるいはその残酷さ、その両方を曝して、その曝しのインパクトってどのくらいのやつで、そこをどう見せるのか、が時代時代の見せかたになってくる、のだろうか。 性と権力の周りで親を失った子らが、お利口さんとバカもの達が、わかったふりをしたり取り繕ったりの輪舞を繰り返していく(みんな懲りない)クリスマスの終わり。
今回のは圧倒的にMalvoliaの物語で、がっちりと仕事や権力の箍に嵌って生きてきた彼女が悪ふざけによってその箍を外された(と思いこんだ)途端にOliviaへの恋に目覚め、そこで解き放たれた激情が彼女自身を思いもかけない方に変容させる、そういうドラマとして強調されている。 ラストに彼女がカツラを脱ぎ捨てる瞬間のカタルシスとかっこよさときたらない。Violaが男女の性(の外見)をスイッチを切り替えるように軽やかに渡っていったのと対照的な、例えばこんなやり方もあっていい。
うーやっぱしシェイクスピアやっぱしおもしろいわ、で終わっちゃってそれが何か? って。これもいつものー。
今日は会社を休んで水戸にピピロッティ・リストを見にいって、府中に動物の絵を見にいって、ほぼずっと電車とバスのなかで移動していたのだが、やっぱり窓の外に羊とか牛がいないとつまんないねえ、って思った。
10.15.2021
[theatre] Twelfth Night (2017) - National Theatre Live
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