2.14.2018

[film] Tystnaden (1963)

1月30日、火曜日の晩、歯科医に口内を血みどろにされた状態のなか、BFIで見ました。 “The Silence”.

ベルイマンの、”Through a Glass Darkly” (1961) ~ “Winter Light” (1963) に続く三部作の最後の。
Ester (Ingrid Thulin)とAnna (Gunnel Lindblom)の姉妹と妹の10歳くらいの息子Johanが電車で旅をしていて、姉のEsterは具合がよくないというので、途中で降りることにして、中央ヨーロッパのある街で下車してホテルを借りて姉妹は別々の部屋に住み、翻訳家のEsterは仕事をしたり、横になったり、Annaは街に出てうろうろしてJohanもうろうろして、街には怪しい輩がうろうろしていて、そのうち戦車も現れたりして、部屋に戻れば姉は具合悪いし、伝染して妹も変になっていくし、Johanはだいじょうぶなのか、どうなっちゃうのか? なかんじ。

前の2部からの流れでいうと、島 → 村 → 街と環境的にはより開かれて近代に寄ってきている一方で、神さま… は、「もういないのかなあ..」から「やっぱしいない、なんもしてくれない」から「もうどうしようもない、なんでもありかも」の方に移ってきて、父親的存在が一切いなくなったところで姦淫もマスターベーションも近親相姦もなんでもあり、都市の描写も含めて全体が悪夢っぽくない悪夢のなかで展開しているようにも見えて、そういう状態で、さて…  という。これをシリアスに落ち着いたトーンの画面構成と最小限の、でもとても不機嫌な会話のなかに淡々を描きだすところがすごい、というかここまで行ったから見えてきたものがあり、この先にあるものまで拡がった、ということではなかろうか。

それにしてもすごいなー、と思うのは絶望、のようなところには行かないとこ。ひどい状態だけど、絶望とかどん底、どん詰まりの闇は最後まで描かれていない気がする。なぜなら、神さまはそういうどん底には決して触れてこないから。

Johanはこの後、”Fanny and Alexander” (1982) のAlexanderになっていった、ということはあるのかしら。
翻訳家の叔母さんがJohanに最後に語ること、そして役者一家だった”Fanny…”のママが語ること、とか。
できれば3部作をもう一回通しで見たいのだが、それはベルイマン特集がひと通り終わったところでのほうがよいのだろうか。

しかしこれ、日本公開時には成人映画指定だったって、なんというか..


Jungfrukällan (1960)  - The Virgin Spring


2月4日、日曜日の夕方のベルイマン特集で見ました。『処女の泉』。
有名な作品だと思うのだが、こんなのも見たことなかったのよ。

中世のスウェーデンの伝説が下敷きであると最初にでる。地方の裕福そうな一家のTöre (Max von Sydow)と妻のMäreta(Birgitta Valberg)と一人娘のKarin (Birgitta Pettersson)が幸せそうに暮らしていて、教会に蝋燭を届けるのにKarinにきれいな服を着せて召使のIngeri (Gunnel Lindblom)を伴わせてお使いに出す。 Ingeriは妊娠していて別の神を信仰しているようで呪わしそうなことばかりぶつぶつ呟いている。

道中で怪しそうな3人組と会うのだが、無邪気なKarinは馬を降りてパンをあげたりしていたら当たり前のように襲われてレイプされて殺されてしまう – Ingeriはそれを陰で見ていることしかできない。
Karinの家では当然のように家族が心配のあまり死にそうになっていて、そこに物乞いで宿を求めてきた先の3人組がいて、クリスチャンの一家は彼らに宿と食べ物をあげるのだが、夜中、彼らの荷物の中からKarinに着せていた服の端切れが出てきて…   ここから先はいいよね。

1960年で、伝説とは言え(伝説なのに)ここまで生々しく凄惨な事件と猛々しい復讐をま正面から描くのか、ていうのと、これを脚色したのが女性(Ulla Isaksson)であることとか、ここからThe Devil's Eye (1960) – 未見 - を経て”Through a Glass Darkly” (1961) にいくのはわかる気がする、というかわかり易すぎやしないか、とか。 タブーをどうこう、というよりも(キリスト)信仰の名の下で目眩ましされてきたあれこれを表に出す、ということではないか。
最後、Karinの亡骸のあとから湧いてきた泉も、聖なる泉がこんこんと、というよりもこんなことができるのだったらなんで生き返らせてくれない?  という呻きのようなものが聞こえてくるの。

それにしても怒り狂ったMax von Sydow, 魔神のようにおっかないねえ。

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